「けーし風」第79号(2013.7)「特集 沖縄に生きる〈権利〉 基本的人権・主権・自己決定権」

2015年10月10日/ 本のこと

「けーし風」第79号の特集は「沖縄に生きる〈権利〉 基本的人権・主権・自己決定権」です。

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特集にあたって(岡本由希子)

昨年12月衆議院選挙で自民党が政権に復活、第2次安倍内閣が誕生した。
年を越して3月、安倍首相が衆議院予算委員会で、サンフランシスコ講和条約発効の4月28日を「主権回復の日」として政府主催式典を開く方針をぶちあげた。
「4・28」は沖縄では日本から切り離され米軍統治下に置かれた「屈辱の日」と呼ばれ、現在まで続く軍事支配の源流と捉えてきた。
一斉に反撥・批判が広まり、県議会や市町村議会で同式典への抗議や中止を求める決議・意見書が次々と可決されていく。
地元メディアでは「4・28」や講和条約の捉え返しが精力的に行われた。

昨年より続く「復帰40年」の検証や、「日米地位協定」の成立からの根源的な批判がなされ、〈オール沖縄〉の反対にもかかわらずオスプレイ配備が強行されたところに、今回の「主権回復」式典である。
ことほどさように、沖縄を踏みつけたうえで言祝がれる「主権」とは何か?
日米安保や地位協定が憲法よりも上にくる日本が果たして「主権国家」と呼べるのか?
さまざまな問いが発せられ、県議会野党・中立会派を中止に政府式典に抗議する「4・28『屈辱の日』県民大会」が宜野湾海浜公園野外劇場で開催された(1万人参加)。

サンフランシスコ講和条約は、日米安保条約と日米行政協定(のちの日米地位協定)とともに1952年4月28日に発行した。
講和条約および安保条約の米側交渉者であるダレス国務省顧問は、日米安保の最大の目的を「われわれが望む数の兵力を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保すること」とし、「アメリカは、日本から確実に基地の権利を獲得するために、寛大な講和条約を用意したのだ」と言い、基地の自由使用を具体化する細目の取り決めが日米行政協定だ。

日米行政協定をアップデートした「日米地位協定」が在日米軍に認めている主な特権は、前泊盛博氏(沖縄国際大学教授)によるまとめでは以下の通り。

1 財産権(日本国は、合衆国軍隊の財産についての捜索、差し押さえなどを行う権利をもたない)
2 国内法の適用除外(航空法の除外や自動車税の減免など)
3 出入国自由の特権(出入国管理法の適用除外)
4 米軍基地の出入りを制限する基地の排他的管理権(日本側の出入りを制限。事件・事故時にも、自治体による基地内の調査を拒否)
5 裁判における優先権(犯罪米兵の身柄引渡し拒否など)
6 基地返還時の原状回復義務免除(有害物質の垂れ流し責任の回避、汚染物質の除去義務の免除など)
(『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』116頁)

米軍基地を沖縄に集中させることによって、安保や地位協定の問題は顕在化することなく頬被りをし続けることが可能となっている。
地位協定の条文一つ変えられない/変えようとしない日本という国が、「主権回復の日」を今ごろ謳うのは、「ない」ものを「ある」と言いつのる自己陶酔的パフォーマンスに他ならない。

政府主催による主権回復の日式典は、昨年衆院選で自民党が「竹島の日式典」と並んで公約に掲げており、「戦後レジームからの脱却」を謳う安倍政権が掲げる「憲法改正」と対をなすものだ。
自民党憲法草案では、国民主権や基本的人権は縮減され、天皇元首、国防軍など国家主義が剥き出しになっている。
草案12条「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」、13条では生命、自由、幸福追求に対する国民の権利は「公益及び公の秩序に反しない限り」尊重されなければならないと、権利を制限するものが「公共の福祉」から「公益及び公の秩序」になっている。
現憲法97条の基本的人権の条文は丸ごと削除され、《国民に対し》憲法尊重の義務を課す条文が加わる。
同草案の作成に関わった議員は天賦人権説を否定している。

〈法〉の例外状態に置かれ続け基本的人権を求める闘いの蓄積を持つ沖縄から、現在の危機を見つめ、取るべき道を探りたい。
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Posted by ブックスマングルーブ店長 at 09:00│Comments(0)
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