「けーし風」第7号(1995.6)「特集 このステージで生きたい 私の中に凝縮された「沖縄」」

2015年10月03日/ 本のこと

「けーし風」第7号の特集は「このステージで生きたい 私の中に凝縮された「沖縄」」です。

けーし風007

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特集にあたって(平良次子)

「うりずん」を呑みほしていたら、気がつくとあっという間に辺りは宣伝しやすい「沖縄」の季節になっていました。
青い海や真夏の日差しが光る、沖縄の売れ時のようです。
そして6・23。
繰り返し訪れるこの季節に私たちは沖縄の光と影を絶えず映し出してきたような気がします。

つい1ヶ月ほど前には、5・15の復帰記念日。
その2週間ほど前は、沖縄にとって忘れられない4・28。
そういった節目を機会に「沖縄」が集約された形で、理解される季節であるといえるかもしれません。
各地で「沖縄」を感じさせる、あるいは、「沖縄」を媒介にして、何かを考えさせる催し物が開催されたりしています。

敗戦50周年。
さてこの節目をどう迎えようかと頭をめぐらせる人たち。
米軍基地の返還・移転問題、オウム真理教の事細かな話題が蔓延し、同時代を生きている人たちが何を考えているのか、ますます解りにくくなって、さまよい人が右往左往している・・・と感じるのは自分の位置がぐらついている証拠なのでしょうか?


そんな中、こんな漠然としたテーマで「沖縄」を考えることはしたくなかった、というのが本音といえば本音です。
これまで過ごしてきた短い人生の中で、空気のように当たり前に自分の身を包んでいた沖縄という風土は、年が増すごとに自分の中から対象化され、言葉に表現していくという作業をおもしろがってきた部分と、氾濫する沖縄についてのあらゆる表現に嫌悪感さえ抱き、蓄積もないのにキーワードばかりで沖縄を語っていく沖縄人にはなりたくないとか、今は、先輩たちからの思いを必死で吸収していかなければここで生まれ育った意味がない・・・と考えることもあります。

近代沖縄の興味深い歴史的なできごとが沖縄人として、あるいはそれぞれの地域の生活者として、そしてこの土地を基盤にして生きる個人としての生きざまのようなものを確立してきたといえるならば、異世代が繰り返し重なりあって生きていく時間の中で、自分では体験し得ないことを私たちはどう伝えられ、あるいは学ぶことによってどう経験しているのだろうかということを、日常の中でその形をみてみたいと思いました。

地域の活動や親戚付き合いは、煩わしいが悪いことではないので義務的にやっていたり、沖縄の歴史や文化について学問的に習得したり、家族や親戚、恩師や先輩たちの力強い環境の下で自然にあるいは強制的に、その思いを受け入れたり反発したり、いろいろな若者が周りにいたせいで、彼らの本音を探ってみたい、とも思いました。


前号の特集で、「うりずんの島への手紙」をいただきました。
沖縄を後にしながら、沖縄を引きずって、あるいは逆に沖縄を離れてから沖縄を見せつけられ、良しにつけ悪しきにつけ意識せざるをえないこの土地。
たぶんこの土地と血でつながっているからでしょうし、この土地のいろいろなメッセージと関わっているからでしょう。

ある時「地域は自殺ができない」と、ふと思ったことがありました。
さまざまな悩みを抱えていても、地域は「気の持ちよう」一つで問題は解決しませんし、その土地に住む多くの人が、知恵を出しあって自分と地域を融合させる努力が強いられます。


今回の特集は、沖縄で生まれ育ち(外での生活経験があるにせよ)現在沖縄で暮らす若者たちに焦点をあててみました。
「戦争と平和」「観光地」「基地問題」「音楽や芸能」「民俗文化」「琉球史」「沖縄戦後史」「自然」などなど、さまざまに語られている沖縄の現実の中で、共有している「沖縄への思い」というのがあるのだろうか?
「語られている沖縄」をこの土地で暮らす私たちは、日常の中で異世代から異世代へどんなふうに伝えているのだろうか?
伝わっているのだろうか?
確かに感得していることがあるのだろうか?
という疑問からこの特集を思い立ちました。

自分の住む土地の風土や歴史に対する思いは、単に「こだわる」だけでは説明がつかない。
キーワードを並べるだけで語れるわけがない。
もっと個人的な、もっと庶民的な日常にエピソードがあるはずだ、と感じます。

そこで、「沖縄とは切り離せない、あなたの今のステージを描いてほしい」と、八つの思いを綴っていただきました。
それに加え、ちがう立場にいる人や、環境のちがいや、「自分の生活している場所について考えたこともないよ」という人や、「どうせ沖縄が一番だよね、という意見にまとまるんじゃない?」と、少々怒っている人の率直な言葉を集めてみようと、アンケートをとってみることにしました。

約180枚配布して、137枚が回収できました。
たくさんの方々のご協力本当にありがとうございました。
「こんな設問はナンセンス!」とか、「頑張ってください(悪口)」などのお叱りの言葉も受けましたが、「一方的な意見」ばかりで語られずに済むように、たくさんの言葉が欲しかったのです。
それをご紹介いたします。
思いは語らなくてもいいのだけどそれぞれ共有できるかな? と思って。
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Posted by ブックスマングルーブ店長 at 16:49│Comments(0)
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